ひきこさん2(解説編)


背がとても高く、活発な子で、先生からも気に入られていました。

しかし、その先生からのえこひいきぶりと、偉そうな名前のせいでいつの頃からか、いじめられるようになり、自宅でも親からの虐待に苦しんでいました。学校でのいじめは次第にエスカレートいって、とうとう

「ひいきのひきこ、おまえ先生にひいきばかりされやがって。そんなにひっぱってほしいのかい?それならひっぱってやるよ!」

ひきこさんをいじめているグループのリーダーがそう言って、ひきこさんの手を縛り、いじめっ子たちが足をつかみ、学校中を引きまわしました。

ひきこさんは廊下の角などに顔をぶつけたり、切ったりしてしまいました。アザや切り傷が、ひきこさんの顔に容赦なく付いていきます。クラスへ戻ってきたときにはもう、ひきこさんの顔はお化けのようになっていました。
 この日からひきこさんは学校へ行かなくなったのですが、それでいじめがなくなったわけではありません。今度は、酒乱の父親とそれに同調する母親から、家でも虐待を受け、なぜ学校に行かないんだ!と、引きずられるようになりました。
それでもひきこさんは、必死に家の家具にしがみつき、ひどいいじめの待つ学校へ絶対に行くことはしませんでした、
 そのまま部屋に閉じこもったまま、ひきこさんは出てこなくなりました。

それから親はそまつな食べ物と水を申し訳ない程度に差し入れるだけで、ひきこさんを部屋に閉じ込めたのです。


 ひきこさんは雨が好きでした。
醜いヒキガエルは自分の醜さを忘れ去れてくれるようで、ひきこさんは雨の日になると、引きこもっている家の窓から抜け出して、小学生たちを襲うようになりました。むかし自分がいじめられていたのを忘れるために。

ひきこさんは、自分の顔を見られるのをとても嫌がります。だからひきこさんが現れるのは雨の日だけで、小学校の近くに出没しては傘で視界の狭くなった小学生を襲うのです。ひきこさんはガリガリの体に、異常に長くなった手足が特徴というように、非常に目立つ格好をしているのですが、彼女を目撃するのはなぜか小学生だけでした。彼女は自分の顔を見た小学生を決して逃がしはしません。

小学生を見つけると「私は醜いかぁ〜!!」と叫びながら全速力で追いかけます。

 もし追いつかれてしまうと、足を持たれて地面を引きずられ、その手は次の小学生を見つけるまでは絶対に離すことはありません。
 そして次の小学生が見つかるころ、ひきこさんの手には変わり果てた肉の塊だけが握られているそうです・・・


かいせつ

 

世の中には、都市伝説から生まれる妖怪というのが存在するんだ。これがけっこう多かったりする。

古いところだと、口裂け女や人面犬、最近では一寸ババアに怪人アンサーといったようなものが、都市伝説から生まれた妖怪だね。

口裂け女や人面犬は有名だから知ってる人も多いかもしれないけど、一寸ババアや怪人アンサーはべつのところで紹介しよう思うから安心してね。とりあえず、「ふーん、そんなやつらがいるんだ〜」と思ってくれればOK

このひきこさんも、それに当てはまるね。ひきこさんが生まれたのは2000年を過ぎてからなので、どっちかというと新しい都市伝説妖怪だね。

インターネットの検索で調べてみても、ひきこさんは八十件程度で(2006年六月現在)、八万三千件を数える口裂け女と比べるまでもなく、ほとんど知られてない存在なんだよね。

え?、じゃあなんでこんな地味な妖怪を、おじさんは紹介したかって?そりゃ怖いからだ(笑)。

実際に、おじさんが自分のホームページで、2006年に調査した「怖い都市伝説を投票してください」という投票コーナーで、ひきこさんは知っている人が少ないにもかかわらず、いろいろな怖い都市伝説を抑えて一位になったことがあるんだよ。

 

ではこれから、もうちょっと詳しい話やひきこさんを防ぐ方法を話していくね。

まずはそのほかのひきこさんの特徴だ。

 

・ひきこさんはまっすぐには走らずにカニのように横向きで走る。

・とても足が速い。

・自分をカッターで切り、目と口が裂けている。

・ひきこさんの家には、仕返しに自分が引きずって殺した両親二人と雨の日に引きずった小学生がコレクションされている。

・雨が降ると、一番お気に入りの子供をうれしそうに引きずって家を出る。

・虫だけではなくひきがえるも食べる。

・ひきこさんが出るという時間がある。

・「私は醜いか〜!?」と聞かれたときに、「綺麗だ」というと気に入ってひきずるし、「醜いですね」と答えても怒ってひきずられてしまう。さらに「まあまあですよ。普通だと思います」といっても引きずられてしまう。

 

いろいろあるね。一つ一つが衝撃的で、ひきこさんの強烈なキャラクターが伺えるとおもう。

さて、次はそんな強烈なひきこさんから身を守る方法だ。これもひきこさんを知る上でけっこう重要だぞ。

 

・ひきこさんはいじめられっ子だったので、いじめられている子はおそわない。

・名札に昔ひきこさんをいじめていた子と同じ名前が書いてあると怖がっておそってこない。

・ひきこさんは自分の顔が嫌いなので鏡を持っていると追い払える。

・「私は醜いか〜!?」と言われたときに、はっきりと「引っ張るぞ!引っ張るぞ!」と言うと追い払える。

 

ひきこさんは案外弱い部分を持っているんだ。もともといじめられっ子だから気が弱いのを隠すために強がっていただけかもしれないね。

 

そして最後に、このひきこさんの話を悲しく、恐ろしいものにしているのは「いじめ・虐待」だと思う。

おじさんも昔はいじめられたこともあるし、人をいじめてしまったこともある。いじめられたほうが多いけど(ふでばこを捨てられたり、自転車の空気を抜かれたりね。)、どちらも絶対にあってはいけないことなんだよね。

みんなも、ひきこさんのはなしを読んで怖いと感じたと思う。だけど、ちがった感じ方をした人もいるんじゃないかな。怖いというよりもなんだか、悲しい気分になったり、読んでいて苦しくなったりね。いじめられたことのある子や、人をいじめてしまった人は自分の経験をひきこさんに重ねてしまったんだと思うよ。そういう、いじめることにたいする後ろめたさや、はずかしさ、いじめていた子に仕返しされたらどうしよう・・・そういった気持ちが、よりいっそうひきこさんを怖く、おそろしいものへ成長させてるのかもしれないね。

いじめをしないこと。いじめられてる子を助けてあげること。とっても勇気の要ることだけど、これが一番ひきこさん退治にききめのある方法だと思うんだ。


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