六十年ぶりの通信
ある男子高校生が夜更かしをしているときのこと―
明日に控えたテストのために、男子高校生は徹夜で勉強をしていた。
その日は普段は聞くことのないラジオをつけながらの勉強だったが、日ごろ勉強をする習慣のない彼はすぐに集中力が切れてしまって、何気なくラジオを聴きながら、ダラダラと勉強を続けていた。
しかし、夜の二時ごろ急にラジオから聞こえる女のDJの声がザァーと乱れてよく聞き取れなくなった。
電波の調子が悪いのかな?とアンテナの位置を変えて、ラジオのつまみをひねってよく聞こえるところにあわせようとしていた。
そのときラジオからは恐ろしい声が聞こえてきた。
「●●島の△△中佐玉砕・・・●●少佐玉砕・・・・まことに遺憾ながらわが軍の●●島における○○隊の活躍むなしく、△△中佐以下全員玉砕となりました!」
(●●島の△△中佐が死んでしまいました。●●少佐が死んでしまいました。とても残念ですが、わが軍の●●島にいた○○隊は一生懸命頑張りましたが、全員死亡しました。)
それからも、男性のハリのある声で、××戦闘地帯で▲▲中尉が死んだ、◎◎大尉が死んだという声が淡々と流れてきました。
男子学生が聞いたその放送は、戦争中の軍部の連絡通信でした。
六十年以上、空気中の壁のようなところに反射を繰り返し、空中をさまよっていた電波が、男子学生のラジオに入り、六十年ぶりに伝えたかったことを伝えたのでした。とても悲しい、戦争で死んだ人の名前を延々と繰り返す放送を。
かいせつ
なんだか怖いと同時にかなしくて、切ない話だね。
おじさんは、この話がちょっとお気に入りなので、紹介してみました。
戦争に絡んだ都市伝説や怪談は多いね。戦争半分、機械半分の都市伝説だ。当然だけど、六十年間も電波が空を飛ぶことはなく、もしなんらかの事故やトラブルで受信がされなくても、すぐに消えてしまうそうだ。しかし、電波が飛行機などに当たって反射をしたために、発信したところからとっても遠くに届いたケースもあったみたいだけどね。
もし、こんな放送が聞こえてきたら怖いだろうなという恐怖が生み出した伝説だね。
でも、ラジオが発明されたころは、ラジオから死んだ人の声が聞こえるはずで、霊界との通信が出来ると考えられた時期が本当にあったんだ。遠くの人の声が聞こえるんだから、霊界の声や死んだあの人の声も聞こえるはずだってね。
発明王エジソンも、人生の後半部分は、死んだ人や霊界との通信機械を作る研究をしていたという。いろいろな実験が行われたみたいだけど、もちろん通信は出来なかったんだ。
きっと、新しいものを使って、かけがえのない人に会いたかったんだろうね。