ピアスの白い糸


 

ねぇ、あたしの友達の友達が体験したマジでやばい話なんだけど、ちょっと聞いてくれない?

 

その友達の友達がね、高校に入学するちょっと前に、耳にピアスを開けようとしたんだって。高校に入ったからピアス開けるのって意外と多いんだよ、高校に入った記念ていうのかな、きまりが自由な高校ならあんまりうるさく言われることないしね。なんてったっておしゃれだもん。

だからその子も開けることにしたんだって。ピアスを開けるときに、病院でしっかり開けてもらう子もいるんだけど、その子は「お金がもったいない。」って自分で開けることにしたんだ。けっこう勇気あるよね。私はちょっと真似できないなあ。

ちょっと怖かったけど、その子はなんとか自分の耳たぶに、ピアス用の穴を開けることが出来たんだ。

(な〜んだ。心配したけど、ちゃんとピアスの穴が開いたし、たいしたことなかったじゃん。)

その子はほっと一安心したの。そして、新しく買っておいたピアスを耳に通すことにしたんだ。その子はピアスの穴を開けると、少しオトナになったような気がしてとってもうれしかったっそうだよ。

 

だけど・・・

 

2日後、その子はなんだか耳がムズムズするのが気になりだしたんだって。それは2日前にはめたピアスの周りからだったの。

(やっぱり自分で開けたのがまずかったのかなあ?もしかするとバイキンが入っているのかも・・・)

それでピアスをはずして、おそるおそる鏡を見ることにしたの。

(よかった、耳の周りは大丈夫みたいだわ。あれ?なんだろうこの糸・・・)

特にバイキンは入っていなくて、安心したんだけど、よく鏡を見ると、ピアスを開けたところから、白っぽい糸が出てたんだって。

(ちゃんと開けたのにへんなのが出てきちゃったなあ。なんだろう?たいしたことなさそうだし、この糸くずがピアスと耳のあいだに入ってかゆかったのね。)

ピアスの穴から出ている糸を見てその女の子はダサいと思ったの。そうだよね、ピアスの変わりに変な糸がだら〜ってたれてたらみっともないもんね。

結局、その子は邪魔だと思って、耳から出ていた白い糸を引っ張って取ることにしたんだ。

(おかしいなぁ、この糸ちょっと切れにくいよぉ。それになんだか耳の中から出ているみたい。)

だけど、やっぱり糸なんて格好悪いから、(えいっ!)って力を入れると「プツッ!」と糸は切れたんだ。ダサい糸も切れたら、なんだか、かゆみも無事に収まったんだって。

 

でもそれが大きな間違いだったの。

 

(あれ、停電かな?)

いきなり、その子の目の前が真っ暗になっちゃたの。でもおかしいんだよね、もし停電でも、まだ夕方のはずだし、部屋には夕日の明かりが入ってくるはずだもんね。だけど周りは真っ暗なまま。

なんだか、急に怖くなっちゃったその子は、お母さんを大声で呼んだの。そして階段をのぼる音がして、おかあさんが部屋に入ってきたの

「なに?どうしたの〜?」

そう問いかけるおかあさんの声がするほうを向いて、

「どうしよう?目の前が真っ暗になっちゃったよ!」

と叫ぶように言ったんだ。お母さんは直ぐに状況を理解して、大騒ぎで救急車を呼んだんだ。

 

そのあとは、いそいで病院に連れて行ってもらって、すぐに目の手術。なんとか成功はしたけど、すごく視力が下がっちゃったんだって。

 

それでね、女の子の耳から出てきた白い糸は実は目につながっている神経なんだって、そんなに大事なものだとわからずに、変な糸だと思って神経を切っちゃったから大変なことになって、病院に担ぎ込まれたんだ。その子は、もう絶対にピアスはしないってさ。

 

なんでそんなのが出てきたかって言うと、やっぱり病院みたいに、きちんとしたところじゃなくて、自宅でピアスの穴を開けたのがダメだったみたい。

もちろん私も、こんなやばい話聞いちゃったし、なんだかピアスが凄い怖くなっちゃった。

 


かいせつ

友達の友達・・・もしかしたらみんなも噂を話すときに使ったことがあるかもしれないね。使ったことがあるなら都市伝説のセンスがあるかもしれないぞ(笑)
でも、その友達の友達には会ったことがあるかな?どこに住んでいる子とかどんな顔をしているとか。う〜んおそらく会ったことがないと思うんだ。特にこういう恐怖体験や、本当かどうか怪しい噂のときなんかはなおさらだと思う。

「友達の友達」。これは日本だけで使われる言葉ではなくて、英語ではFOF(フレンドオブフレンド)といったりするの。なんだかUFOみたいだね。いるかいないか良くわからないってのは同じだけど(笑)
本当はいない人間なんだけど、「これは友達の友達が体験した本当のはなしなんだ〜」ってまるで、自分の知り合いが本当に体験したかのように話をされたら、信じちゃうかも知れないよね。こういう決して出会うことのない「友達の友達」から話が伝わってくるというのも都市伝説の特徴なんだ。

さて、本題に入ろうか。「ピアスの白い糸」これは、1980〜90年ごろに広まりだした比較的新しい都市伝説だね。この時期は新しいファッションとして、ちょうど若い人たちが、ピアスを開け始めた頃なんだ。
でもまだこの頃には「せっかくお父さん、お母さんが生んでくれた大切な体に穴を開けて傷つけてしまうなんて・・・」って否定的な意見も結構あったんだよね。世の中に、新しいものやちょっと危険そうな商品や流行が起ころうとすると、それに反対の声や、疑問の声をあげる人は必ずいるんだ。こういうところから生まれる都市伝説はたくさんあるぞ。
ピアスもこれに当てはまって、耳に穴を開けないといけないピアスは、なんだか良くないことが起こるかもしれない、もしかしたら体の具合が悪くなるかも・・・という考えが元になって、この都市伝説が出来たんだろうね。
この話を信じている人もまだ多い。中学生が集まるインターネットのサイトを見ると、「ピアスを開けると失明しませんか?」という女子中学生の書き込みをいくつか見ることができる。

で、この白い糸は本当なのかって?もちろん嘘だよ。耳って顔にくっついてるし、大事な脳みそにも近いから、なんだか重要なものが通ってそうな感じはするよね。
まあ耳もとっても大切なところなんだけど、目玉の神経はもちろん通っていないよ。まれに白い糸がでることがあるけど、それは耳のあかがピアスと一緒に出てくるだけだ。その辺は安心してほしい。
でもみんなの中で、将来はピアスを開けたいって思っている子たち、絶対学校やみんなのうちでのきまりは守ろうね。世の中にはピアスはしちゃいけないアルバイトや職場なんかもあるからね。(たとえばおじさんの働いている給食センターとか、食べ物を作るところは特に禁止だよ。)


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