初帰省

三島さんという会社の先輩から聴いた話。

ある年の夏、彼女が結婚してから初めて旦那さんの実家に泊まりに行くことになりました。
実は結婚した当時ちょっとごたごたしていて、あまり旦那さんの実家には行きたくなかったけど、夫婦そろって夏休みが取れこともあって泊りに行くことにしたそうです。

お昼頃に旦那さんの実感に到着、向こうの両親とあいさつし、夕食を食べ、会話もずいぶんしたそうです。
結婚して何年か経ったけど、実はこれだけたくさんのお話するのは今日が初めて。
夕食を食べ終わる頃には旦那の家族に対してのわだかまりみたいなものをすっかり無くなり、楽しい時間を過ごしたそうです。

そしてその夜、三島さんは夢を観ました。
ふと気が付くと椅子に座っていました。
周りを見渡すとコンサートホールのような場所。目の前には舞台があって椅子も沢山並んでいます。
しかしそこには自分一人しかません。
なんでこんなところにいるんだろうと首をかしげていると、
舞台に人が現れました。

現れたのは一人ではありません。何人もの男の人たちです。
奇妙なのはその姿で、着物を着ている人、鎧を着ている人、ボロボロの服を着ている人など様々ないでたちです。
その男たちが舞台に横並びになります。さながら合唱コンクールのようでした。

そして舞台に最後に現れたのが古ぼけたスーツを着てひげを蓄えた男の人。
彼はまるで指揮者のように一列に並んだ男たちの前に立ちます。
しばらく男たちの顔を見た後、おもむろに三島さんのほうをふりかえりました。
そして彼女を手で指し示すと、

「さゆりです。」

と三島さんの下の名前を呼びました。
いきなり自分の名前を呼ばれて三島さんは驚きました。
驚きのあまり口がきけません、舞台の男たちも何も話しません。

そしてしばらく沈黙が流れた後、舞台に並ぶ男たちから拍手があがりました。

パチパチパチパチパチ……

驚きが止まらない三島さんの舞台の前で拍手は続きます。

パチパチパチパチ……

そこで目が覚めました。
へんな夢だったけど不思議と嫌な感じはしませんでした。
この夢の話をしようと、旦那さんのいる居間の隣の部屋を扉を開けて三島さんは固まってしまいました。
旦那さんはお盆が近いので盆棚を作っていたところでした。
完成間近の盆棚には三島家の先祖の位牌がまるで夢の舞台に居た男たちのようにならんでいました。
そして、遺影として置かれた写真には夢で自分の名前を呼んだあの男性だったそうです。
何も知らないご主人は「これ、うちのおじいちゃん」と教えてくれました。

結婚の時いろいろあったけど、旦那のおじいさんは自分のことをご先祖様たちに紹介してくれたのかもしれないね、
そしてご先祖様たちも拍手で認めてくれたのかしら。
本当に不思議な体験だったわ。と三島さんは言いました。