初日は車で山小屋まで行き一泊してから登山する計画だった。
全員で行きたかったが、彼氏のB男は用事があるため、バイクで遅れて山小屋に着くことになった。
A子はD男の運転する車にC子と一緒に乗り、B男よりも一足先に山小屋へ向かって山道を登っていた。
最初のうちは二人と話をして盛り上がっていたが、ついウトウトして眠ってしまった……
気がつくともう山小屋だった。どうやら寝てしまったらしい。
体を起こして辺りを見回すとC子とD男が真剣な面持ちで立っていた。
「どうしたの?」
二人の異常な雰囲気にA子は問いかけた。
「A子、気をしっかり持ってくれよ。実はなさっき警察から連絡があってバイクで途中まで来ていたB男が山道から落ちて死んだらしい。」
「そんな……」
A子は絶句した。自分の一番大切な彼が事故で死んでしまうなんて……
ショックを受けたままA子はひとりひざを抱えて塞ぎこんでいた。
そして夜、山小屋のドアが乱暴にノックされた。
「おい!A子あけてくれ!」
B男の声だ!A子は開けようとしたがC子とD男が引きとめた。
「だめだA子、B男は死んでいるんだぞ!きっと幽霊だろう。君を連れて行こうとしているんだ。ゼッタイにドアを開けちゃいけない!」
二人は強い口調でA子を諭した。
しかしドアをノックする音はさらに続いた。
「たのむ!A子いるんだろ!?開けてくれお願いだ!」
B男の声が聞こえる。B男を見たい、もう一度会いたい…
A子は二人の制止を振り切ってそのドアを開けた。彼の待っているドアを…
―次の瞬間、景色が変わった。
白い天井が見える。そして目を赤くはらしたB男の顔が見えた。
「A子・・・よかった本当によかった……」
BはそういってA子を抱きしめた。
訳のわからないでいるA子にB男は事情を語り始めた。
それによると事故に遭ったのはA子とC子、D男の車の方で崖から転落して
A子は一晩病院のベッドで生死の境をさまよっていたという。
「C子とD男は死んだよ。即死だったってさ。」
B男はぽつりと言った。
A子が先ほど見たことを話すと一言、
「あいつらもさびしかったんだろうなあ。おまえを連れて行こうとしたのかもしれない。」
解説
死者が道連れにしようとするパターンは多くありますが、この話はそれにひねりを加えた良作だと思います。
よく出来ているため、芸能人のなかにはこの話を「友達の実体験」として語る人もいるようです。
よく出来ているため、芸能人のなかにはこの話を「友達の実体験」として語る人もいるようです。