外車の復讐

あるところに乗りなれた外車を大切に使っている夫人がいた。

そしてある日、婦人のもとに車のセールスマンがやってきて新車の売込みをした。

「さきほどガレージで見ましたが、今使ってらっしゃっている車はだいぶ古いのではないですか?もしよろしければ、弊社で下取りさせていただきまして新車をお安く売らせていただきますよ。」

セールスマンの必死の売り込みに、夫人も今使っている外車の調子が最近悪いため、そろそろ買い換えようと決心した。

「わかったわ。新しい車を買うことにします。だけどちょっとお願いがあるの。今まで使っていた車は人の言葉が分かるみたいなの。飼い主の妄想かもしれないけど、あの車の前で買い替えの話はしないで頂戴ね。それを知ったらキット嫉妬すると思うの。」

セールスマンは夫人の言葉を全く信じず、持ち主の妄言だと思った。そして、契約が取れたうれしさもあってか夫人の家から帰るときガレージに停めてあった車に向かって
「お前はそろそろ売られちゃうんだぞ、それまでせいぜい頑張れよ。」
と言ってボンネットをポンポネットを叩いて上機嫌のうちに帰宅した。

数週間後―
セールスマンは夫人の家に新しい車を納品した。
そして、夫人が今まで使っていた車を売るために工場へ運ぼうとしてエンジンをかけたそのとき―

ボォン!!

キーをまわした瞬間に車のエンジンが爆発し、セールスマンは死んでしまったという。
言葉が分かるという外車の復讐は見事に達成されたのだ。