見ていた女2

ある学生がケガをして病院に入院した。
怪我自体は軽く、1週間もすれば退院できることのことだった。

しかし、その病院は「出る」と評判の病院であった。
ところが霊を信じない彼は友人にそのことを聞いても全く気にしていなかった。

ある日の深夜、トイレに行きたくなり目が覚めた彼はよたよたとトイレへ向かった。
深夜の病院は不気味な雰囲気ではあったが、彼はよろけつつもトイレの前に来た。

カチャカチャ・・・・カチャカチャ・・・・

そのとき廊下の奥の方から金属が触れ合うような音が聞こえた。
『なんだ?手術の用具でもトレイに乗せているのか?だがこの階は病室しかないぞ・・・』
そして音がだんだんと近づいてきました。

それは彼の予想通りに手術用具を乗せたトレイを押している看護婦であったが、
血だらけの白衣と禍々しい空気から彼女が人間でないことは明らかだった。

彼は仰天した。早く逃げないと看護婦に見つかってしまう!
しかし今の彼は怪我をしているので早くは動くことは出来ない。
そこで目の前のトイレに駆け込み個室の鍵をかけ隠れることにした。

カチャカチャ・・・・カチャカチャカチャ・・・キィーキィー・・・・

トレイを押す音が大きくなってくる。
彼は必死に息を殺し通り過ぎるのを待った。
そしてしばらくすると彼の思いが通じたのか、トレイの音は聞こえなくなっていた。

『よかった。助かった・・・』
安堵した彼が病室に戻ろうと顔を上げると血だらけの看護婦と目が合った。
看護婦は彼の存在に気付いていたのだ。
そしてトイレの扉に手をかけ彼を見下ろしていたのだ。


解説

怪談の本を見ているとそこそこの頻度で見かける話ですね。
見えている女1の方が世間的には知名度は低く、日おろしているのは上記のように看護婦の幽霊というケースが多いです。
私がはじめて聞いた話も看護婦のほうで、それから私の中では「看護婦の幽霊=しつこい」という図式が成り立ったほどでした。(笑)

しかし調べてみると、この話の原型には丑の刻参りの女の方が近いようで、
なんと、元ネタと思われるのは天狗でした。
昭和40年代に
下駄の音に追いかけられた男がトイレに逃げ隠れて安心して上を見るとそこには天狗がぶら下がっていた―
と言う話がすでに出来ていたようです。

話の主役も現代人にはなじみの薄い天狗から幽霊へそして丑の刻参りの狂った女というように、
だんだんと私達の身の回りに潜む恐怖へと移り変わっていく様はとても興味深いですね。