溶接実習

とある工業高校での話―

その日は溶接の実習授業が行われていた。
鉄を溶かして加工する溶接では温度が数千度に達し、いやがおうにも温度が上昇する。

しかし、ある男子生徒が汗をぬぐうために目を保護する遮光マスクをはずしてしまった。
そしてその瞬間、彼は目の前で飛び散る溶接の火花を直接見てしまった。

夜、コンタクトをしていた彼はいつものようにはずして眠ろうとした。
しかしいつもと違ってなかなかコンタクトが外れない。
彼が焦って力をこめると、ぽとりとコンタクトが手のひらに落ちた。

だがその瞬間、彼の片方の視界は暗闇に飲まれた。
彼はパニックになって救急車で病院に運ばれると、医者にこう言われた。

「あなたの片方のコンタクトは角膜とくっついていました。おそらく溶接を直接見てしまったときに、火花の高熱によって角膜とコンタクトが癒着してしまったのでしょう。残念ですがもう片方の目も・・・」

彼の視界はしばらくして完全に失われた・・・


解説

日本だけではなく世界中に同じ話があり、おそらくアメリカから伝わってきた話だといわれており、
主に工業高校や造船所といった溶接に縁のある場所で広まっているようです。


そしてこの話につきましては私がどうこう言うよりも、(社)日本溶接協会様が通達を出して注意を呼びかけていましたので、以下に転載させていただきます。


これまでに,コンタクトレンズを使用した溶接作業者の失明という重大災害の情報が幾度となく流れていますが,
これらの情報はいずれも虚偽であることが明らかになりました。

以下に当委員会の調査結果を報告し、あわせてコンタクトレンズ使用時の注意点について記します。

1.情報の内容情報は,いずれも次のような内容です。
『コンタクトレンズを使用した溶接作業者が,しゃ光めがねを着用せずにアークを見てしまった。その後コンタクトレンズを外したところ,レンズに角膜が随伴して失明した。この原因は,アークから発生するマイクロ波によって,コンタクトレンズと角膜との間の水分が蒸発してしまい,その結果角膜とレンズが密着してしまったためである。』

情報の冒頭には必ず「ある工業高校で」,「同業他社で」などという場所の特定がなされていて,災害事例がもっともらしくされていますが,これまでに場所も被災者も確認されたという報告は認められません。失明という重大災害でありながら,厚生労働省をはじめ労働安全衛生関連の諸団体から事例として公表されていません。(以下略)

前文(pdfファイルです):http://www.jwes.or.jp/jp/safety/contactlenses.pdf