カオリさん

女子高生のAさんが一人で渋谷に遊びに来ていました。
S坂を下って、やや人気のないかどを曲がると、
いきなり後ろから声をかけられました。
「ねえ、ピアスしてる?」
振り向くと、そこには自分と同じくらいの女の子が立っていたのです。
「ねえ、ピアスしてる?」
うつむき加減で顔はよくわかりませんが、そんなことを繰り返し聞いてきます。
なんだか、陰気な感じもするし質問の口調も重苦しい感じをAさんは受けました。
自分がピアスをしているかなど、見ればわかるはずです。
「ええ、(ピアス)していますよ」
これ以上付きまとわれるのもなんなので、さっさと答えて立ち去ろうとしたのです。

しかし、次の瞬間女の子がAさんに襲い掛かり、ピアスをしている耳に噛み付くと、
耳たぶをピアスと一緒に噛み千切ってしまいました。
悲鳴を上げるAさんを尻目に、その女の子はダッシュで逃げてしまいました。

実はこの女の子は昔、ピアスを開けたときに出てきた白い糸を引っ張って失明してしまった子なのです。
それからというもの、こうしてピアスを開けて幸せそうにしている同年代の女の子の耳たぶをかじる奇行をするようになってしまったのです。


解説

この噛み千切った女の子の名前は、カオリさんと呼ばれることが多いようです。
都市伝説の被害者が新しい都市伝説の加害者になるという珍しいパターンです。(ピアスの白い糸の被害者)
ピアスの白い糸は語りつくされた感があるものの、今度はカオリさんという妖怪じみたキャラクターを生み出してしまったのかもしれません。