国語のテストでよくある問題に、「この時の作者の気持ちを答えなさい」というものがある。
その作品に込められている作者のメッセージをしっかり読み取ることができるかどうかという、いわゆる読解力が問われる設問で、小学生から大学入試まで幅広く取り入れられている。
ある作家は、朝起きて新聞を読むことを日課にしていた。世の中の動きを知り、面白そうな作品の題材を探すのに新聞は必要不可欠であると考えていたからだ。
その日の新聞には、前日に行われたセンター試験の問題が掲載されていた。
作家は職業柄自信のある国語に少し挑戦してみようかと思い、センター試験の問題を読んで驚いた。
なんと自分が昔書いた文章が問題として取り上げられているではないか。
驚きながらも文章のあとに書かれた問題を読むと、作者の気持ちを問う設問があった。
この問題だけは間違えるはずがなかった。なにせこの文章を書いたのは自分なのだから。
選択肢から自分の心境に近いものを選び、答えをめくって更に驚いた。
選択した答えは間違っていたのだ。
つまり、作者の気持ちとは違うものが正解とされていたのである。