突然の弱体化

ネットゲームをしているユーザーにとって大きな関心のひとつは、
定期的に行われるキャラクターや職業の強化と弱体化である。

ゲームの性質上、プレイヤーの選ぶ職業間に強い弱いの格差が存在する。
強力な魔法や特技を持っている職業ならば、強い敵と戦って沢山の経験値やお金を稼ぐことができる。
弱い職業だと強い敵を倒せないどころか、プレイヤーの集まりにすら「弱い職業だから」と誘ってもらえないこともある。
そのためにプレイヤーたちは職業間の強さにとても敏感になるわけなのだ。

オフラインゲームであればそのままにするしかなかったこの問題も、解決できるのがネットゲームの強みだ。
ゲームをアップデートする際に特技や魔法のバランス調整をおこなって、なるべく職業間に不公平感をなくすことがネットゲーム運営をする上で重要な要素である。
ユーザーが長期間プレイすることはゲームの売上に直結するので、職業の強化・弱体化はまさにネットゲームの肝といえるだろう。


ある大規模オンラインゲームがあった。
人気となった作品の続編のビッグタイトルで、前作でネットゲームのノウハウを蓄積したこともあってか多人数のプレイヤーを抱えながら大きなトラブルがなく運営をしていた。
バランス調整も概ね良好で、多少の不満は出るもののプレイヤーはこのゲーム世界を楽しんでいた。
ところがある時行われたバージョンアップで、特定の職業が大幅に弱体化されてしまった。
この職業で楽しんでいたプレイヤーは不満を爆発させた。決して強い職業というわけでもないのに、一転してお荷物の職業になったのだから。
それからこの職業を使っているユーザーはパーティーに誘ってもらうことが少なくなり、ゲーム全体も非常にギスギスしたものとなってしまった。

なぜこんなことが起こったのかというと、個人的な恨みが背景にあった。
ゲームの運営会社の代表が自社製品であるこのネットゲームを品質チェックも兼ねてプレイしていた時に、
悪質なユーザーにPK(他のプレイヤーに殺されてしまうこと)されてしまった。
怒り心頭の代表は自分の権力を大いに活用して、自分のキャラを殺した相手の職業を徹底的に弱体化したのだ。