これは高校時代の先輩から聞いた話。
私が入学する何年も前の話なのだが、ある女子生徒が学校で自殺をしたという。
本校舎の外階段、その3階の柵から身を投げて短い生涯を閉じた。
彼女が自ら死を選んだ理由は分からなかった。
事件から何年も経っていることもあって、話を教えてくれた先輩にも動機を知る術はなかったという。
校内での自殺、たしかに痛ましい事件ではあるものの、それもしばらくすれば風化してしまう。
だが彼女が自殺をしたという確たる証拠は校内に残り続けた。
それが鏡である。
校舎の3階には鏡がなかったのである。
私も見たことがあるが、3階のトイレ手洗い場にある鏡は取り外されており、他の階にはある廊下の姿見も3階にはなかった。
撤去された理由なのだが、彼女が自殺をしてからと言うものの、飛び降りた3階の鏡に彼女が姿が映るようになった。
いるはずのない女が映り込む鏡、当然生徒たちはパニックになった。
この騒ぎに対して教師たちは怒りを露わにした。
この騒ぎを集団ヒステリーの一種だと考え、全く相手にせず、勉強や運動に集中していないからそんな幻覚を見るのだと生徒を罵倒する教師もいたという。
だが、その教師が3階の鏡で自殺した女子生徒の霊を見てしまった。
生徒が騒ぎ、教師も見てしまった鏡に映る霊。
これを収束させるため、学校は3階の鏡の全撤去という手段を取った。
よほど出たのだろう。
そこまでして彼女が何を訴えたかったこととは一体何だったのだろうか。
この校舎も5年ほど前に新校舎に建て替えられてしまった。
現在、三階の鏡はどうなっているのだろうか。建て替えて成仏していてほしいと願うばかりだ。