後追い自殺

4月8日に岡田有希子が自殺し、新聞や週刊誌に彼女の無残な姿が掲載された。
そして、この日から彼女の死に触発されたいわゆる「有希子シンドローム」とよばれる現象が起きた。
後追い自殺の始まりである。
新聞によるとこの月に19歳以下の自殺者は100名にのぼり、sのほとんどが岡田有希子の後追い自殺である。
アイドルの自殺が社会に及ぼす影響の大きさは計り知れないものになった。


解説

(都市伝説ラジオより、ブローカーさんありがとうございます。)

4月24日、千葉で更に中1少女の飛び降り自殺が報じられています。
彼女は岡田さんのファンで、自殺にショックを受け、岡田さんの飛び降り自殺を報じたワイドショーのビデオを繰り返し見ていたそうです。
――4月24日付「読売新聞」「毎日新聞」、いずれも夕刊から。

但し、岡田有希子さんの後追い自殺と判明したのは、24日の千葉の件も入れて3件。圧倒的多数は動機不明。
しかも千葉の事例では「ファンだった」というだけで、実はこっちも詳細な動機は分からんみたいですね。
また4月15日、神戸で「岡田有希子さんのようになりたい」と小4の妹に告げて自宅マンションから飛び降り自殺した16歳の少女も、遺書には「お父さん、お母さん、けんかをしないで下さい」とあったのだから、その前の家庭の事情に悩んでいたのでしょう。
――同年4月15日「朝日新聞」(夕刊)から
そう考えると、本当に岡田さんの後追い自殺と、ほぼ断定できるのは1件――確か少年だったと思います。

翌5月、岡田有希子さんが自殺したビルから若い男が飛び降り、全身打撲で死亡。
隣のビルの屋上へ登り、目的のビルへ飛び移ったものだが、下にいた男性数人が「やめろ、やめろ」と説得したらしいが、結局、飛び降りてしまった。

そして7月に再び幽霊騒動が頭をもたげます。
まず7月21日、名古屋駅前のホテルのから高校生の少年2人が飛び降り自殺。屋上の床には黒いチョーク(“黒いチョーク”なんてあるんですね。始めて知りました)で、「有希子さんのところへ行きます」と。
ただ詳細は分からんのですが、この場合も熱心なファンは1人だけで、もう1人は「つき合った」だけの可能性もある。

あくまでも私の知る限りですが…“幽霊騒動”が活字メディアに取り上げられたのは、このへんからではないでしょうか。
週刊紙・女性自身の8月5日号に「百日法要の中で岡田有希子さん“テレビ幽霊”――これが問題のビデオテープだ」
週刊ポスト8月8日号「亡霊騒動の次はまた“後追い自殺”―岡田有希子シンドロームはまだ伝染する」
さらに女性自身は8月19・26日号では「岡田有希子だけじゃない! テレビ幽霊5大事件」なんて特集も。これなんか、機会があったら是非読んでみたい記事ですね。

女性自身はよほどこのネタがお気に召したのか、翌86年の4月14日号でも「岡田有希子さん自殺現場に出た霊写真!!―“夜のヒットスタジオ”の写真から新たな発掘写真まで」なる特集を組んでいます。

もっとも“幽霊騒動”に批判的な記事も目に付きます。
例えば女性セブンの8月14日号「岡田有希子“テレビ騒動”は“嘘”だった――トリック全解明」
一方が“幽霊騒動”、もう一方が“あれはトリック”と、このあたりは女性週刊紙同士の読者獲得合戦の思惑もあるのでしょうか?
ちなみに方針転換したのか、女性セブンは10月30日号では「岡田有希子さん、さまよう霊魂!? 関係者3人“怪死”」なる特集を組んでいます。

その後9月4日に、今度は東京・四谷で18歳の少年が飛び降り自殺。現場には週刊紙のグラビアから切り抜いたと思われる、岡田さんの写真が散らばっていたそうです。
以後、岡田さんと関連のありそうな自殺は、新聞には載っていないと思います。

こう考えると、まるで何10人もの少年・少女が岡田さんの後追い自殺をしたようなイメージがありますが、実際のところ多くて5人、間違いないところではせいぜい3人くらいではないでしょうか?
勿論、それでも大した人数で、当時の岡田さんの人気・カリスマぶりを象徴するものだと思いますが。

また「岡田有希子さんのようになりたい」と、多くの多感な少女たちが飛び降りたかのような印象もありますが、それは上記・神戸の事例だけ。
それも本当に岡田さんの後追いかどうかは疑問なのは、既に述べた通り。知る限り、岡田さんの後追い自殺をしたのは、いずれも男性。