自動改札が世にでて間もないころの話。
ある老婦人が上京した息子に会うために、東京にやってきた。
そこで彼女は、初めて自動改札というものを目にし、半ば驚き、半ば感心した。
機械の扱い方はあまり得意ではなかったが、前の人がしているのと同じように無事改札を抜けた。
しかし、本当のトラブルは、乗車駅ではなく、下車駅で訪れた。
彼女は切符を持っていなかったので、下車駅改札を通り抜けられなかったのだ。切符はどうしたのかと駅員がたずねみても、自分はちゃんと自動改札を通った、と繰り返すばかり。
どうにも話がかみ合わないので、よくよく事情を聞いてみると、この老婦人は、乗車駅の改札に投入した切符は、何もしなくても「自動」で下車駅に送られていると思っているのだった